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ブリコラージュ(BRICOLAGE) 2011.4.5

metalstone_01.jpgMetal Stone

Metal Stoneは、河原の石を型取りして、鋳物に置き換えたスタディーモデルです。美しいと思っていた河原の石の曲面ですが、金属に置き換えてみると、意外と曲面はガタガタと不均一で美しくないことに気付きました。そこで、元のカタチは大切にしながら、どこから見ても美しい曲面となるよう削り磨いたのです。パーフェクトな曲面を持つ金属製の河原の石は、河原の石以上に創造意欲をかき立てるのではないかと考えたわけです。
河原の石は、一つひとつ、形や大きさ、重さ、色、手触りが異なります。河原には、そのような個性の異なる石が大量に転がっていますが、不思議なことに、その中でも気になって手に取ってしまう石があります。彫刻的な形に魅了されて宝物になることもあれば、小さな石は箸置きに、中くらいの石はペーパーウエイトに、大きな石は踏み石になどと、色々使い道を考えることもあります。

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富山県高岡市のHiHillプロジェクトでは、器に使えそうな石を拾ってきて、型取りし、電気鋳造で器を作る実験を行った事もあります(Photo:001/002)。デザインを学ばなくても、器に使えそうな美しい石を選べれば誰でも器が作れる。作り手がデザインまで手がける手法の模索でした。

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河原の石の形をした花器、wata-shiは、一個でも、複数個合わせてでも使え、河原のような風景を演出できるように考えたデザインです。他にも、世の中には河原の石をモチーフにデザインしたプロダクトは数多く存在します。しかしそこまで作り込まなくても、河原でバーベキューをする時に、河原の石をかき集めてかまどを作ったり、大きな石を椅子代わりにしたりといった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。河原の石は、必要な時に、人の想像力で様々な道具に変容する可能性があるように思います。河原の石を特別に作り込む必要はない。むしろ作り込まないほうが、柔軟にあらゆる道具に変化する可能性があるのではないか?それがMetal Stoneをデザインするきっかけでした。
Metal Stoneを飾っていると、色々な人が「これは何?」という質問をしてきます。その時は「さて何でしょう?」と応えています。ペーパーウエイト、指圧棒、2個でカードを挟み込むカードホルダー、数個合わせて石けん置きなどなど、色々な答えが返ってきます。どれもが正解です。あらかじめ決まった用途はないが、人の想像力を喚起し、様々な道具に変化するプロダクト。Metal Stoneのデザインでは、太古の人たちの想像力とリンクする未来のプロダクトのあり方を考えていました。

写真004〜006は、今年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻の大学院を卒業した菅野尚子さんの作品です。彼女の研究テーマは、「日本プロダクトの特性研究と応用」。畳やお膳など、時代を越えて使い続けられている日本のプロダクトの特性を解明すれば、地域や時代の違いを越えて使い続けられるプロダクトをデザインすることができるのではないかと考え研究に取組みました。これらのプロダクトを「表層」「行為」「社会」「環境」という4つの要素で分析した結果、「分ける/まとめる」という二律背反している事象が同居しているという特性を発見しました。その特性を応用したのが「落ち葉プロダクト」です。「落ち葉プロダクト」には、固定的な姿形や用途がありません。部屋の飾りのように見えた落ち葉の吹き溜りが、アクセサリーに、衣服に、ブランケットに、タープに変化する。目的に合わせて変容するプロダクトの概念モデルです。

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ochiba_03.jpg006(004〜006 Photo:Naoko Kanno)

写真007〜010は、同じく多摩美術大学プロダクトデザイン専攻を今年卒業した森敏郎くんの卒業制作「Formless Shape」です。「プロダクトとは何か?」という問いへの思索です。彼の興味は、人とモノ、モノとモノ、壊れると壊れないの境界を探ることにありました。分子レベルで物質を捉えると、それらの境界は曖昧です。人もモノも、そしてその間にある空気も、分子と分子が緩やかに結合して形成されている。そのレベルで見ると、どこからどこまでが人でモノなのか、壊れていると壊れていないの違いは何なのかを明確に決定できないと考えました。そこで、分子のように、緩やかな結合と分離ができるプロダクトのモジュールのデザインを試行錯誤しました。当作品のモジュールは、たった一本の折り曲げられたナイロン樹脂の棒です。手作りの約5万個のパーツは、大きな塊として一体化することも、自由な形に成型することも、バラバラにすることもできます。求めるどのような形にも変容するプロダクトの概念モデルです。

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formless_01.jpg011(007〜011 Photo:Toshiro Mori)

菅野さんと森くん、二人は全く異なる入口から入ったにも関わらず、似たようなプロダクトの未来像を仮説だてています。二人の作品は、Metal Stoneのデザインで私が考えていたことともリンクしているように思います。しかし、「落ち葉プロダクト」も「Formless Shape」も、Metal Stoneに比べ、よりしなやかに、より柔軟に、様々なプロダクトに変容する可能性を示唆しています。外界の変化に対し離散と集合を行い適応を計るロバストな生態系のような特性を持つプロダクトです。人の創造力をかき立て、臨機応変に必要な道具になる。クロード・レヴィー=ストロースのブリコラージュを誘発する、原始的だが先端的なプロダクトデザインの未来像が見えてきます。
プロダクトデザイナーは、デザインするプロダクトの最適解を求めようとします。ワインボトルのデザインなら、ワインボトルとして最適なデザインとは何かを考えます。しかしワインボトルは、それで人を殴れば武器になるし、空きビンを花器にすることもできる。想定とは全く異なる用途で使われる可能性があるということです。ブリコラージュを誘発するためには、「ワインボトルはワインボトルであってワインボトルではない」という視点が必要になるのかもしれません。
菅野さん、森くん、写真の提供など、ご協力ありがとうございました。