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Glass Studio 2012.4.30

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ガラス作家、高橋禎彦(たかはし よしひこ)さんのスタジオを約20年ぶりに訪ねました。高橋さんは私が最も尊敬しているガラス作家です。昨年は国立近代美術館工芸館で個展が開催されました。現在、「ほぼ日刊イトイ新聞」でも紹介されています。

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自宅とスタジオの外観です。自宅もスタジオもほとんど手作り。気負いのない温かな風情を感じます。窓は廃品を利用するなど、いろいろな工夫が見られます。

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スタジオ内は一見雑然としていますが、そこに作業中のガラス作家の動線を感じます。動的なレイアウトとでも言いましょうか。素人が見ると、なんとも複雑な操作ボタンやレバー、計器類が立体的にランダムにレイアウトされているように見える航空機のコックピットに似ていると感じました。そして、動線上の道具のいたるところに高橋さんの工夫の跡が見られます。

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写真004のメタリックのボールがぶら下がっている針金を引っ張ると、グローリーホール(※)フタを簡単に開くことができます。(写真005)
※グローリーホール:宙吹き作業中に、ガラスが冷えて固まらないように暖める高温炉。

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写真006の道具は、ガラスの成型作業を一人で行うための道具です。太いゴムチューブのパーツを吹き竿のマウスピースに取り付け、細い透明チューブを口にくわえます。そして、吹き竿を作業台に置き、片手で吹き竿の回転をコントロールし、もう一方の手でジャック(ガラスの形を整えたり、筋目を入れたりするピンセット型の道具)などを持ちガラスを成型しながら、必要な時に必要な量の空気をガラス内に送り込むことができます。既製品を改造して、ガス管(?)とOリングを組み合わせ、マウスピースから外れにくくしているところに、最も簡単な問題解決法を創出する力を感じます。

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高橋さんが作る道具の特徴は、どこにでも転がっていそうなパーツを手早く組み合わせていることだと思います。道具を作るためにお金と時間をかけた形跡が見られない。必要最低限のエネルギーしかかけていない印象を持ちました。それは、作品の制作にこそ最大のエネルギーを投入するためと感じました。

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それが証拠に、ガラスに直接触れる道具類(写真008)や、ガラス材(写真009)などは、あり合わせではなく、厳選されたものが使われていました。

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しかし高橋さんが目指している究極の姿は、求めるグラスウエアを作る時にだけ、必要な材料や道具を調達し、目的を達成したら解体することのようです。そのため、極力道具を使わず、吹き竿に巻いたガラスの固まりの温度加減と重力や遠心力を利用するだけでグラスウエアを制作する技を磨いていました。その技術的な話は言葉だけでは説明できませんが、一言で言えば、水墨画を描くようなモノづくりなのではないかと思います。